2016年10月1日土曜日

おい磯野、野球しようぜ

おれはあまり性格の良い子供ではなかったから、小学校の卒業文集で「将来の夢はプロ野球選手です」などと宣言してしまうような級友たちのことを、腹の底では馬鹿にしていた。
こんな田舎の少年野球チームのレギュラーにさえなれないのに、どうしてプロ野球選手になりたいなんて言うことができるのか、不思議で仕方なかった。
歳をとってあの頃を振り返ってみれば、本当に馬鹿だったのは誰なのかがよくわかる。

おれはその時、自分の夢を隠した。
何を言ったのかも覚えてないが、とにかく本当になりたいものは言わなかった。
本当の夢を口にしたところで、誰にも理解してもらえやしないと思っていたのかもしれない。
それはもしかするとある面では事実だったかもしれないが、仮にそうだとしても、やはり間違っていたのはおれの方だった。

嘘つきの才能がないのに自分を偽ってばかりいると、やがて演じていたはずの自分が本性にすり替わってしまう。
というよりも、演じる自分以外の自分なんて、元からどこにも存在しないのだ。
嘘のつもりで話した言葉は、例外なく真実になる。
だからおれは、他人から見てそれがどんなに馬鹿馬鹿しく滑稽だったとしても、やはり堂々とプロ野球選手になりたいと言うべきだった。
いや、別にプロ野球選手になりたかったわけではないんだけど。

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