2017年8月26日土曜日

手を打つ

おれは昔、少年で、何も持ってなかった。
1ヶ月ほど前から、ほとんど眠れなくなってしまった。
ずっと待っていたし、ひどく惨めで、時々幸福だった。
誰もおれではないのだと思う時、惨めで、幸福だった。
家を空けて、電車へ乗って遠くへ行く機会が少し増えた。

電車はおれを運んでくれる。
家では(おれには、家がある!)、無数に散らばったレコードと、ソファの上の殴り書きだらけの紙きれと、テーブルの上のフィルム写真と、ベッドの上の畳んでいない洗濯物が山のように重なっているだろう。
こんなはずではなかった、という格好で。
ぱん、
と手を打ったなら、消えてしまいそうに思う。
ソファも。テーブルも、ベッドも。残暑も、冷房も、家も、電車も。彼らも。おれも。
でも、手を打つことができない。

もうずっと、打たないでいる。

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